yonesuke’s diary

日々精進

博士課程1年目を振り返る

2020年の4月から京都大学大学院情報学研究科に博士課程として入学してから1年が経ちました。 ここに博士課程1年目に起こったことをまとめておきます。 将来博士課程に進学する誰かの参考になれば良いなと思います。

僕は京都大学大学院情報学研究科先端数理科学専攻の 非線形物理学講座という研究室に所属しています。

sites.google.com

修士までは同じ情報学研究科の数理工学専攻の研究室に所属していて、博士課程から移ってきました。 主にリズム現象に関する研究を行っています。 特にリズム現象を記述する結合振動子系が示す同期転移を、力学系の手法を用いて理論解析をしたり、統計力学の手法を用いて数値計算をしたりしてきました。 最近は流行りに乗っかって機械学習の勉強も少ししようと思っています。

4月

新しい研究室に所属して頑張って研究をするぞ!!と思っていた矢先に新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う緊急事態宣言が発令されました。 そのため、ずっと家に篭りっきりでした(みなさんもそうだったと思いますが)。 研究室のセミナー等はすべてzoomで行われることになりました。 これまで研究室で研究するタイプの人間で、家では勉強していなかったので、家で勉強とか研究をするのに慣れなくてあまり集中できませんでしたね。。。 あとしょぼい椅子に長時間座ることになって体がバキバキになりました。 椅子を奮発して買ったのですがこれが良かったです。こういうものには投資していくべきだな、と気付かされました。

研究の面では修論の結果を論文にまとめる作業をずっとしていました。 あとガウス過程の勉強をはじめました。 また、TAの業務がちょくちょくありました。貴重な収入源なのでありがたいです。

5月

この頃はずっと学振でしたね、、、辛かったです。 申請書を書くのがまじで向いていないなあ、と実感しました。 研究者たちは科研費を取るためにああいった申請書を書き続けているのだ、と思うと頭が上がりません。

5月の終わり頃に緊急事態宣言が解除されて、この頃からちょくちょく研究室に行くようになりました。

6月

6月のはじめに学振の締め切りがあって肩の荷が下りた感じがしました。 ただ、申請書でいうと民間奨学金の申請と学振を持っていない人対象のRA雇用の申請もあって、 6月の前半も申請書で潰れていた気がします。 (本当は気合を入れたらすぐできることだったと思うんですが、 頭の片隅に申請書がずっとちらついていて研究をしていてもあまり集中ができない感じでした。)

7月

修論の結果を論文にまとめる作業もだいぶ収束してきてarxivにアップロードしました。

arxiv.org

(arxivにアップロードするとき、texファイルやらepsファイルやらを一個ずつポチポチしないといけないのはなんとかならないんですかね。。) また、論文をPREに投稿しました。投稿してから毎日のようにstatusのところを眺めていました。

学振も論文も終わったのでずっと積んでいたデスストランディングというゲームを一気に終わらせました。 めっちゃおもろかったです。

8月

色々なことが片付いたので、研究のことを一旦忘れて勉強に全振りしていた気がします。 特に関数解析の勉強を重点的に行いました。 この時期はやるべきことも特になくて平和だった気がします。

9月

9月は日本物理学会とRIMSの力学系研究集会での発表がありました。 あと7月に投稿した論文の査読も帰ってきて8月とは一転急に忙しくなりました。

9月の終わり頃に学振の結果が帰ってきて不採用でした。 もちろん残念だったんですが、思ったほど悲観的ではなかった気がします。 落ちるだろうなあ、と思いながら結果を待つようにしていたのと、 TA・RAやJASSOや民間の奨学金のおかげで死なない程度には生きていけていたからなのかなあ、と自己分析をしていました(笑)

10月

10月からは後期の授業が始まりました。様々なことが引き続きzoomで行われていました。 8月からちょくちょく関数解析を勉強していたおかげで読める(理解できる)論文が少し増えたような気がします。勉強は大事。

この後期から京都外国語大学で非常勤講師として授業を受け持つことになりました。張り切ってnotionでホームページ的なのを作ってみました。

www.notion.so

こちらも授業はすべてオンラインでした。学生とのやり取りにはmicrosoftのteamsというサービスが使われていて、 それでオンラインの授業も行いました。 授業をオンラインでするのは初めてだったのですが、やはり学生の顔が見えないのでみんながどれくらい理解しているのかが全然わからなくて 結構難しかったです。「手を挙げる」機能を使って適宜わからないところがないかを学生に聞いてみたりしていました。 授業の準備(授業スライド、演習問題、解説などなど)で半日から一日近く潰れていた気がします。 研究者の方々も毎年のように授業の準備をしているのだ、と思うと頭が上がりません(2回目)。

11月

9月に帰ってきた論文の直しがようやく終わり、PREに投稿し直しました。 今度はめっちゃ返事が早くて、acceptが決まりました。 よく読んでいた雑誌なので通ったのは嬉しかったです。

関数解析の勉強をしたし、neural networkの万能近似定理の証明を読みました。元論文はCybenkoによるものです。

link.springer.com

この論文はいい感じの活性化関数を使った3層neural netoworkにおいて、中間層のunit数が無限の極限では任意の連続関数に近づけることができることを証明しています。 せっかく読んだので研究室内で発表することにしました。5人くらい(?)参加してくれて、2週に分けて関数解析の基礎から万能近似定理の証明まで話すことにしました。 駆け足で説明したのでみんながわかってくれたかは分からないです(笑)

この時期はアメリカで大統領選挙が行われて、それに関連して(関連はしてないですが)Strogatz先生がtweetしたことが目に止まりました。

ここで紹介されていた研究を全然知らなくて、でもめっちゃ面白かったので自分でも何かできるのでは無いかと思い、色々手を動かし始めました。 いい感じの結果も出て春の物理学会でも発表できるレベルになったので良かったです。 こう振り返ると11月は色々頑張った月だった気がします。

12月

論文が無事に出版されました。

journals.aps.org

新しく論文を書き始めたのですが、あまり集中できませんでした。 その代わり競技プログラミングを始めてしまいました。atcoderの問題をずっと解いていた気がします。 (最近は止まってしまっていますが。。。)

B4の終わりに買ったパソコンの調子が悪くなったので、M1 mac miniを買いました。 消費税が10%なことを恨みました。

1月

この時期はB4M2が卒論修論を書いていて、それに触発されて僕の論文執筆のやる気も戻ってきました。

10月から受け持っていた授業も期末試験を行う時期になりました。 テストの作成とかで結構時間が取られた気がします。 成績評価の仕方で悩んだのですが、できるだけ学生が合格できるような評価方法にしたつもりです。 採点とかはteamsの機能を使えば自動で行ってくれて非常に便利でした。 可能なら来年以降も使いたいと思っています。(4月からは対面授業なのでどうするのかは不明)

M1 Mac miniが届きました。今の所問題なく動いていて買ってよかったかなと思います。 欠点とpythonとかの環境整備がめんどくさい(miniforgeってのを使わないといけない)ことくらいですかね。 VSCodeVSCodeC/C++拡張機能も標準でM1 Macに対応するようになったので数値計算とかをする上では特に問題はなさそうです。

2月

2月の間に一気に論文を書き上げました。そのうちarxivに上げられるようになる気がしています。この時期はかなり集中していました。 RIMSの研究集会で発表したことを拡張したものをまた別の論文としてまとめることにしたので、そっちも書いていかないといけないです。

Disney +で始まったワンダヴィジョンがこの時期に終わりを迎えました。 めちゃめちゃ面白かったですね。今後のMCUの展開に注目です。 あと、エージェント・カーターとエージェント・オブ・シールドを見始めました。 こちらもかなり面白いです。

3月

3月はまた学会シーズンということで、日本物理学会と北大の数学総合若手研究集会に参加しました。 beamerのテーマをmetropolisにしてみたのですが結構イケてる気がします。

次年度に向けてまた申請書地獄が近づいてきている気がします。 少しずつでもやっつけていきたいと思います。

お金

最後にお金についてまとめておきます。特に僕のような学振を持っていない博士課程の学生にとっては死活問題だと思うので。 (よく考えると学振を持っていない博士課程の学生のほうが多いですよね。)

  • TAは前期、後期ともにやっていました。 TAの業務を行えるかは研究室にも依存してくるものだと思うので、 その点は恵まれている気がします。
  • RAをしていました。情報学研究科では学振に落ちた学生を中心にRA雇用によって最大50万円を支援する制度があります。 この制度に申請して採用してもらうことができました。ありがたいです。
  • 日本学生支援機構(JASSO)から奨学金を受け取っていました。博士課程だと月8万円か12万円かのどちらかを選べます。 返済額が恐ろしいことになりそうなので8万円にしました。 ただ、博士課程の間に借りた分に関して返還免除申請ができるのでそれが通ればラッキーです。
  • 民間の奨学金をもらっていました。今年度は岩垂奨学金というものをもらっていました。 本当に感謝しきれません。ありがとうございます。

こんな感じでやりくりしていました。結果的にお金に困ることはなかったので良かったです。 TAやRAが行えるかは所属の環境にも依存することだと思うのでそこらへんは注意してください。

最後に

修士のときは博士課程に進学することに対する不安は結構あって、正直今でもあります。 そんな中で1年を過ごしたわけですが、論文も書いてるし学会にも参加できているので思ったよりもなんとかなったかな、というのが今の気持ちです。 なんとかなったのは周りの環境が良かった、というのが大きいと思いますし、いい環境で研究できていることには感謝です。 早くも博士課程は残り2年になっています。悔いのないように頑張りたいと思います。